専攻概要
京都大学大学院工学研究科 化学理工学専攻は、既設の化学系6専攻(材料化学専攻、物質エネルギー化学専攻、分子工学専攻、高分子化学専攻、合成・生物化学専攻、化学工学専攻)が一つの専攻に集約・改組される形で、2026年度から新たに設置されました。この改組は、化学という学問が社会から受ける要請の広がりと変化の加速に対応し、喫緊の課題に対処できる研究者・技術者を育成することを目的としています。

学問としての「化学」はしばしば"Central Science"とも呼ばれ、その学際性が最大の特徴です。古くは熱力学、統計力学、量子力学を介して物理学と深い関係がありましたが、近年は生化学、分子生物学を介した生物学との関係や、コンピュータサイエンス、データサイエンスとの関係などの重要度も増しています。このような現状において、旧来の「物理化学」「有機化学」「無機化学」といった縦割りの分類に基づく研究開発の重要度は次第に低下し、複数の分野にまたがる、あるいはどの学問分野にも分類されない新しい研究分野が次々と生まれています。本専攻の名称である「化学理工学」には、特定の学問領域に限定されず化学全体を包括すること、そして「化学の基礎学理をもって理工学の発展に貢献する」という趣旨が込められています。
本専攻は、高度な専門能力と広い分野の学際的な知識を学生に体系的に修得させることを目指し、柔軟性と機動性を兼ね備えた研究教育組織を構築します。教育研究は、固定化した下部組織を設けず、以下の2つの主要な要素で構成されます。
1. 教育組織としての「トラック」
体系的学問の修得を目的とし、「物理・量子化学」「有機化学」「無機・分析化学」「高分子化学」「生物化学」「化学工学」の6つの科目群からなり、各トラック教員団による講義・演習が行われます。学生は主たるトラックを軸として専門知を深化させます。
2. 研究組織としての「領域」と「研究モジュール(RM)」
先端の研究を推進する組織であり、「環境・エネルギー化学領域」「材料・分子システム化学領域」「実装化学領域」「生医工化学領域」の4領域が設定され、その中でRMによるオンザリサーチトレーニング(ORT)が実施されます。領域とRMは世界的な研究動向の変化や社会要請に応じて定期的に編成が見直されます。
この体制の特色は、学生が履修する「トラック」(専門知の深化)と所属する「領域」やRM(学際知の涵養)が必ずしも1対1対応ではないことで、異なる分野の研究者との共同作業を大学院の低学年の段階から経験できる点にあります。また、国際化に対応するため、国際インターンシップや英語での講義提供を継続・拡充する「化学理工学専攻グローバルコース」を設けています。
専任教員は116名(教授35名、准教授25名、講師11名、助教45名)で構成され、修士課程215名、博士後期課程62名の学生定員を有します(2025年度時点)。
