【材料・分子システム化学領域】粘度が1億倍以上変わる多孔性液体の開発 ~液体の流れやすさで二酸化炭素吸着機能を制御~

京都大学アイセムス(高等研究院 物質-細胞統合システム拠点:WPI-iCeMS)のXiangmei Xiang 工学研究科博士後期課程学生、Zaoming Wang 博士研究員(当時、現・四川大学)、古川修平 教授らの研究グループは、工学研究科化学理工学専攻の浦山健治教授らとの共同研究により、ナノ空間を持つ液体「多孔性液体」の粘度を、1億倍以上変化させる新しい分子設計法を開発しました。
多孔性液体は、ガス分子を取り込むナノ空間と液体としての加工性をあわせ持つため、ガス吸着・分離や化学プロセスへの応用が期待される一方で、多孔性液体を輸送・循環させるには「流れやすさ」を表す粘度の制御が不可欠です。従来は、溶媒の種類や多孔性成分の濃度、高分子鎖の長さを変えることで粘度を調整していましたが、この方法では材料中のナノ空間の量を損なうという課題がありました。
本研究では、ナノ空間を持つ金属錯体多面体(MOP)の表面に12本の柔軟な高分子鎖を結合させた分子を用いて、MOP内部のナノ空間を維持したまま、粘度を幅広く制御できる多孔性液体を合成しました。具体的には、MOP表面の官能基を変えることで、高分子鎖がMOP表面を包むように折り畳まれた状態や、外側へ伸びて隣接するMOP分子の高分子鎖と絡み合った状態を示すことが明らかになりました。その結果、結合する高分子鎖の長さや本数を変えることなく、MOP表面の官能基を変えるだけで、60℃における粘度を1.8×101 Pa·sから3.0×109 Pa·sまで、約1億7000万倍にわたって制御することに成功しました。
さらに、今回作製したいずれの多孔性液体においても、MOP内部のナノ空間に二酸化炭素を取り込めることを確認しました。特に、長い高分子鎖を持つ多孔性液体では、低温では鎖の動きが抑えられナノ空間の入口をふさぐ「閉じたゲート」として働く一方、温度を上げると鎖の動きが活発になり、二酸化炭素がナノ空間へ入りやすくなることが明らかになりました。
本研究は、多孔性液体における「ナノ空間の量」と「流れやすさ」を独立に設計するための新たな指針を示すものです。粘度を幅広く設計できるようになることで、循環型のガス吸収液に適した低粘度材料から、分離膜や塗膜の形成に適した流動性の低い高粘度材料まで、用途に応じて多孔性液体の物性を作り分ける技術につながることが期待されます。

本成果は2026年8月4日(日本時間)に、米国出版社American Chemical Societyの雑誌である「Journal of the American Chemical Society」オンライン版で公開されました。

詳しい研究について

粘度が1億倍以上変わる多孔性液体の開発

研究者情報

書誌情報

タイトル Viscosity and Pore Accessibility Control of Type I Porous Liquids by Modifying Surface Functionality of Metal-Organic Polyhedra(⾦属錯体多⾯体の表⾯機能化によるタイプI多孔性液体の粘度および細孔アクセス性の制御)
著者 Xiangmei Xiang, Zaoming Wang, Masataka Yamashita, Shang-Wei Lin, Po-Chun Han, Mako Kuzumoto, Ayana Miyata, Javier Lopez-Cabrelles, Yuki Hosoi, Hsiao-Ching Yang, Koichi Mayumi, Li-Chiang Lin, Kenji Urayama, Shuhei Furukawa
掲載誌 Journal of the American Chemical Society
DOI 10.1021/jacs.6c07430
KURENAI

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